不動産売買契約書の中に「公租公課等の分担」という条項があります。

不動産取引では、この公租公課に関する精算が商習慣として行われています。

法的な根拠はありませんが、関東と関西で取り扱いが異なったり、購入時の諸費用として見込んでおく必要があるため、購入時に慌てないよう・困ることがないよう、お家を買う前に知っておいて損はありません。

公租公課とは何か、起算日や売主と買主どちらが負担するのか?を説明します。

公租公課とは?

公租公課とは、国または地方公共団体によって、公的な目的のために課される金銭負担のことです。「租税公課」ともいわれます。

不動産取引でいう「公租公課」とは、購入する対象不動産に対して課される固定資産税・都市計画税のことを指しています。

この固定資産税・都市計画税は、毎年1月1日時点の土地や建物の所有者に対して、市区町村が、その年の起算日から始まる年度分の税として課税します。

いずれも納税義務者は、1月1日時点で所有者として固定資産課税台帳に登録されている人になり、年度の途中で所有者が変わっても、税制上の納税義務者は1月1日時点の所有者となります。

※都市計画税は、都市計画区域のうち市街化区域と呼ばれる地域内にある土地や建物が対象です。

公租公課の起算日・精算とは?

【 起算日 】

起算日とは、期間を数え始める第一日(初日)のことですが、公租公課の起算日は1月1日とする考え方と、4月1日とする考え方があり、売買契約書の中でどちらを起算日とするかを定めていることが一般的です。
固定資産税・都市計画税の起算日は、大阪(関西圏)では4月1日を起算日とすることが一般的です。(地域によって異なるので要確認)

【 公租公課の精算 】

公租公課の精算とは、固定資産税と都市計画税を、所有期間で期間按分して精算することです。

不動産売買における公平性を保つため、所有権移転日を境に固定資産税等を日割計算で精算することにより、売主と買主とで公租公課の分担が行われます。

固定資産税・都市計画税は、その年の1月1日現在の所有者が納税義務を負います。その年の途中で売買により、所有者が変更しても、1月1日時点での所有者が納税義務を負うことに変わりはありません。
そこで、商習慣として売主と買主の間で日割計算による精算が行われるのです。

公租公課は売主と買主のどちらが負担するの?

売買契約の売主と買主との間で、引渡日を基準として日割計算をし、売主と買主とで分担、精算することを売買契約時に合意することが一般的で、引渡日は買主負担とすることが多いです。

精算方法は、買主が自身の負担分を決済時に売主に渡し、売主が納税する、が経験上ほとんどですが、他にも仲介会社がそれぞれの負担分を預り、まとめて支払うケースもあるようです。

【 公租公課の分担についての注意点 】

大阪(関西圏)では、新年度の納税通知書は4月から5月初旬頃に発送されることから、売買契約時点で新年度の年税額がわかっていないこともあります。
そんな場合は、新年度の年税額がわかってから後日精算するか、前年度の年税額を基に精算するかなど、売買契約時に取り決めがなされ契約書に記載されます。

いくら納税義務者は売主だとしても、公租公課の精算に関する条項が設けられている以上、買主が費用を支払わなければ、約束違反(債務不履行)となりますし、拒むと取引が円滑に進まない可能性もありますので、そこは条項に従い気持ちよくお支払いください。

FUKURO'S VOICE僕が所有者となる引渡日からの固定資産税・都市計画税の期間按分額を、僕の負担分ってことで支払えばいいんだよね♪

不動産売買契約書の条項をしっかり確認しておきましょう

公租公課の分担に限らず、不動産契約時の書類(売買契約書や重要事項説明書)には、初めて聞く専門用語や文言が沢山出てきます。
「何だか難しいなぁ~まぁいいか」で聞き流してしまうことのないよう、理解できない文言はもちろん、疑問点や不明点は、不動産会社や担当者に納得するまで質問・説明してもらいましょう。

不動産売買契約書は、売主・買主・不動産を仲介した不動産会社にとって、合意した決まり事であり、「言った・言わない」「聞いた・聞いていない」のトラブル回避のための書類でもあります。

不動産売買契約書や重要事項説明書の内容をよく理解した上で、署名・捺印したいものですね。

この記事を書いたのは…

イラスト

富岡千賀子
Tomioka Chikako

不動産会社としてお客様の家探しを手伝う傍ら、「大阪府宅地建物取引業協会」が定期的に区役所などで開催する不動産無料相談会の相談員として多くの人の悩みにアドバイスしている。宅地建物取引士ほか、管理業務主任者、公認不動産コンサルティングマスター、賃貸経営管理士など多くの資格を持つ。
T・Mプランニング株式会社代表。